マリー・ド・メディシス連作は、マリーの誕生から現在の息子との和解に至るまでの生涯をギリシャ神話風に描いている。それまでにもルーベンスは「パリスの審判(第一作)」を始めギリシャ神話を何作も描いている。生々しい現在の人間を神話にしてしまうというルーベンスの政治感覚が伺われる。
そしてパリで、仏王妹アンリエッタ・マリーと英王太子チャールス1世との婚礼準備に来ていたバッキンガム公と知り合い、その後ルーベンスのコレクションをバッキンガム公に売って、英国との繋がりもつくっていく。英仏とつながりをつくり、南ネーデルランド公妃の安全保障を行っていたのだ。
デュマの「三銃士」に出て来るバッキンガム公は、権力欲も享楽欲も強く、アブナイ人物。嘘か誠か、仏王妃アンヌに不倫を仕掛けることになっている。ルーベンスはバッキンガム公を、「英国王を振り回し、しなくてもよい戦争に身を投じさせている」と鋭く評している。
しかしこの鋭敏な外交と政治能力がかえってうとまれることとなった。その主は権力の中心にあったリシュリュー枢機卿である。画家としてはあまりに知り過ぎている。しかもハプスブルク宮廷の人間ではないか、と。本来その次に「アンリ4世の生涯」を描くはずだったが、未完となった。
下はルーベンス作「バッキンガム公の勝利」
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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