バロックの時代6-カラヴァッジオ帰還途上死す

マルタ島で投獄されたカラヴァッジオは、2週間後に脱獄に成功して1608年10月シチリア島に渡る。映画では神が助けてくれることになっているが、やはり誰かが助けてくれたのだろう。シチリアの古都シラクーサで、ローマの旧友の画家に世話になった。守護聖人「聖ルチアの埋葬」などを描いている。

しかし彼は、マルタ島で襲撃したベッツィア伯爵の復讐を恐れて、近くのシチリアにはおれず、対岸のメッシーナに移った。メッシーナは港町として繁栄しており、彼はここで「ラザロの復活」を描く。キリストの手によって復活しようとするラザロは、まさに自分をうつしている。

一か所におちつかない画家は、シチリアの首都パレルモに行き、さらにナポリに帰った。が、09年10月24日、居酒屋でベッツィア伯爵の手の者に襲われ重傷を負った。ここでもコロンナ公爵夫人に助けられ、別荘で養生した。この頃から殉教画を描いているが、闇がさらに濃くなっていく。

その頃ローマでは画家の恩赦嘆願が行われていた。10年7月、彼は全財産と数点の絵を持ってローマへ旅立った。しかし港町パロで、山賊と間違えられ逮捕される。釈放されたときには、荷物の乗った船は出航していた。彼は次の港まで歩き熱病に冒されて亡くなったのである。最後の絵「マグダラのマリア」には闇の底から神を求める彼の心が映し出されている。祈りといえば究極の祈りかもしれない。

下は映画「カラヴァッジオ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。