1609年、またもや改宗イスラム=モリスコの追放がスペインで起きた。モリスコはカスティーリアでは少数だったが、アラゴンやバレンシアでは多く残っていた。彼らは差別にも耐え、よく働いた。何よりも彼らの古くからの灌漑技術は優秀だった。しかし、キリスト教農民はそれが腹立たしい。
盛期を過ぎたスペインの経済問題はすべてモリスコのせいにされた。それに異端審問所がからむ、何やらまるでトランプ政権のアメリカのようだ。国王フェリペ3世の寵臣レルマ公は、モリスコの財産を没収して、王室財政を立て直そうとした。歴史は何回も繰り返す。
4月9日、勅令が交付され、9月30日、最初のモリスコが追放された。ところが何と船賃まで請求され、船の中でも殺害された。その噂が広がり、10月、モリスコの大規模な反乱が起きた。しかし11月に反乱は鎮圧され、さらに厳しく追放が課せられ、その数は30万人にのぼった。
バレンシアではその数は住民の33%にのぼった。これで農業は壊滅状態となる。より豊かだったバレンシアとアラゴンを窮乏させたことで、スペインはますます凋落を早めることとなり、何のことはない、モリスコの分はキリスト教農民の税金にかかったのである。しかし隠れモリスコとして残った者も多く、2006年になってモリスコの子孫の復権がなされた。
ペラ・オロミグ作バレンシアのモリスコ追放
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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