To be or not4-リア王の旧世代喜劇

ドン・キホーテと同じ頃、シェークスピアも旧時代の人間を悲劇として描く、1606年初演された「リア王」である。リア王は、実に親に孝という旧世代の道徳をすっかり信じている。そこで姉2人の言うことに満足して領地を与え、言えない三女を追放する。

ところが姉2人はお追従だった。権力を譲ってもらったとたんドライに掌を返して、父に冷たくあしらい、すべてをとりあげてしまう。現代でも子の家をかわるがわる訪ねてはうっとうしがられる親がいるが、どちらにもすげなくされて、王はパニックに陥り、ドン・キホーテ的喜劇役者となる。

「そこに権力というものの巨大な姿があるのだ。犬に権力が与えられるから人間も従う」何もかも失うことで初めてリアルな姿がわかるのだが、それは他人には狂人の言葉として映る。実にドン・キホーテ的アイロニーがここにも出てくる。

狂気のリアこそ語るのだ「栄華に奢る者よ、薬を飲め、身を晒して貧しき者の苦しみを味わえ。そうすれば、お前達も余れるものを彼らに与え、天の正義を示すことになるだろう。」実は共に放浪したエドガーが、その苦しみを味わい、次の時代の王となる。愚かな権力争いや対立をやめ、キリストの原点に帰れというのだ。

下は「ロード オブ ザ リングス」のイアン・マッケラン主演

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。