バロックの聖性5-聖フィリポ・ネリのオラトリオ

ついに実現したアンリ・ド・ナヴァルの改宗による新旧の和平であるが、これにはいろいろな人が尽力している。新旧さまざまな人脈を持ち、ボルドー市長も務めた思想家モンテーニュもその一人である。彼はアンリ4世に乞われながらも政治から身をひき、「エセー」を書き続け1592 年に死去した。

そしてもう一人活躍した人がカトリックの聖人聖フィリポ・ネリである。彼は、信徒同士が平等な立場で講和をしたり討論をしたり、聖歌を歌う集いを開き、これが広がるにつれ「オラトリオ会」と名付けた。しかし、上下関係をもたないことから異端と警戒されたこともある。

1575年、教皇グレゴリオ13世にオラトリオ会は公認を受けてから、自然発生的に各地にオラトリオ会は広がった。公認を受けて、ネリは会で歌う聖歌を当時の高名な作曲家パレストリーナに依頼した。ここに多声音楽を使った音楽劇「オラトリオ」ができたのである。

ネリは、アンリ4世の依頼で、ヴァチカンとの橋渡しを行った。彼は地位の高低にかかわらず、誰とでも気軽に語りその心を掴んだ。教皇も彼の徳を信頼するようになり、自由に出入りできる身分となった。戦った者、和を求める者、多くの人が関わり、犠牲となってようやく結論を見た。

下はスカルラッティ作「オラトリオ聖フィリッポ・ネリ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。