黒王妃の戦争15-無念!ギーズ公暗殺

無敵艦隊の敗北が即西英の力関係を変えたわけではなく、後付け歴史である。英国は翌1589年にアゾレス諸島に遠征したが今度は撃退され、その後もスペインは英国攻撃を狙う。しかし英国では、世界最強のスペイン帝国の侵略を撃退したことは大いに国威をあげ、絵に描かれた。

オランダでも敗北の影響は現れた。オランダ総督パルマ公は、南部よりネーデルランドを鎮圧しつつあった。ところが無茶な英国侵攻のためそれがストップして、独立勢力が勢いを盛り返し、英国との連携も密となり、士気も向上して戦況は思うにまかせなくなる。

そしてフランス、無敵艦隊敗北の報は程なく王アンリ3世の耳に入った。王はカトリックのギーズ公アンリにがんじがらめにされていた。ギーズ公主導で開催された第二回ブロア三部会はカトリック回帰を宣言したが、その最後で「余の許可なく陰謀を謀らむ者は大逆罪だ」と宣言した。

何のことかと思いきや、88年12月23日、クリスマス直前に何と配下のガードマン連「45士隊」に命じて、ギーズ公を暗殺、翌日には弟を始めとしてギーズ派を全員逮捕した。欧州カトリック再興は、スペインの頓挫と共に挫折してしまったのだ。

下はポール・ドラルーシュ作「ギーズ公暗殺」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。