近世の混沌3-近世の革命家、カルヴァン死す

1564年5月27日、ルターと共に宗教改革の象徴となったジャン・カルヴァンが55歳で死去した。60年には彼の主著である「キリスト教要綱」が完成、4巻80章となり、カルヴァン派の「神学大全」として、大きな影響力を果たすことになる。

さらに彼は、ジュネーブを本拠として各地に宣教師を送り、彼らを通じて情報を得て、すぐ文章にして手紙を送り、指導をしていた。ここまでくればロシアを本拠に共産党インターナショナルをつくったレーニン並である。事実新聞もない当時は、説教はアジテーションの威力があったのである。

ルター派は聖人崇敬など旧教要素を残したが、カルヴァン派は徹底的に聖書のみの解釈を行って伝統と決別した。そういう意味では彼はルネサンスの文献学の子といえる。そして彼の後を継いだテオドール・ド・ベース以降今日に至るまで、聖書を解釈して、その通りの世界をつくろうという政治活動の出発点となった。

しかしカルヴァンは臨終にあたって、自分は多くの欠点を持っていて、自分のしたことは何の値打もなく、みじめな被造物だと言った。今日数多くの宗派ができているこの現実をどう思うだろうか。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。