引退式で皇帝カール5世に寄り添っていた男が居た。オランイェ公ウィレムである。ウィレムは少年の頃から皇帝のお気に入りだった。そして皇帝のもう片側には息子フェリペ。皇帝の寝室まで立ち入れたのはこの2人だけだった。もちろん2人は親友で、ウィレムは息子の名前をフィリップと付けた。
スペインに帰ったフェリペは父の後始末に忙殺された。カール5世は、ヨーロッパ統一と対オスマン戦争で、スペインに莫大な借金をつくっていた。そしてフランスのアンリ2世相手にまだ戦争中である。。1555年12月に仏王と教皇が同盟、教皇はミラノを与えると、スペイン軍は教皇領に侵入した。
翌56年にはフランスもイタリアに侵入し、父フランソワ1世の夢見たナポリに迫った。そしてネーデルランドでも火の手があがった。要衝サン・カンタンの戦いで仏軍が敗北、フェリペは嫁の英女王メアリをも上陸させた。たまらぬアンリはイタリアを撤退して、全軍を北に投入して形勢逆転。
58年200年もの間英領だったカレーをフランスが占領、メアリは政治的危機に陥った。しかしもう仏西共に資金が枯渇して破産宣言せざるをえず、金が原因で半世紀続いたイタリア戦争は終結するのである。仏はトリノ近辺を除いてイタリアを放棄した。しかしこの講和会議で新しい事態が始まるのだ。
下はイタリア戦争終結のカトー・カンブレジ条約を結ぶフェリペ2世とアンリ2世
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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