「黄金の都ゴア」は最初はザビエルを魅了した。しかし数カ月もすると、虚栄に満ちた姿がわかってきた。とりわけ現地ポルトガル人が女奴隷を買って欲望を満たしているのが腹立たしかった。そこで1545年、異教徒への布教をめざして最前線のマラッカに移った。
マラッカは、300人足らずのポルトガル人が堅固な要塞に守られて生活しているだけで、1547年にもイスラム船団によって攻撃を受けた。このとき迎撃に行った船の安否を気遣う住民にザビエルが「明日きっと帰ってくる」と言った予言が的中し、その名を高めた。
マラッカの主力はイスラム商人であり、モルッカ諸島の香料をヴェネツィアに運んで莫大な利益を得ていた。ザビエルもモルッカ諸島に布教に行って多くの人を改宗させたが、ここで嵐に会い、付けていた十字架をなんとカニが拾って届けてくれたという逸話がある。
東アジアの大国中国との貿易もポルトガルは志向したが、1521年と23年、広東で勝手に城塞をつくって貿易をしようとして追放された。さらに日本の勘合船もトラブルを起こして、明は海防を強化してしまった。中国に布教に行く手だてはなかったのだ。
下左はザビエルのアジア宣教右はルーベンス作「聖フランシスコ・ザビエルの奇跡」
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント