最後の皇帝25-ザクセン若大将モーリッツ

新教派が先制攻撃に失敗し、1546年9月、ネーデルランド軍を迎えた皇帝カールはようやく軍を動かした。しかし小競り合いだけで戦況は動かない。カールは待っていたのだ裏切りを。ザクセン公モーリッツ、まだ20代の若さでありながら文武に優れ大器と謳われた。ところがザクセン分家で領地が乏しい。

モーリッツはルター派だが、小さくまとまとまるのは嫌いだった。むしろ皇帝のように欧州相手に駆けてみたい野望があった。対オスマンにも馳せ参じた。その中で皇帝のキリスト教統一に同意し、皇帝派に加わる密約をした、ザクセン選帝侯の地位と領地と引き替えにだが。

そして10月、ついにモーリッツが決起し、ザクセン領内に侵攻した。関ヶ原の西軍のように新教側は諸侯連合軍、裏切りには弱く、ザクセン選帝侯などはもう自領に帰りたくなっていた。ヘッセン方伯は娘婿モーリッツの裏切りにパニック状態になった。

新教側は崩れ、バイエルンの戦場を撤退してしまった。皇帝軍はアウグスブルクを開城させたあと、南ドイツの新教都市を制覇していった。すると遠くフランクフルトまでもがいち早く皇帝に恭順を示して続々とかけつけた。南ドイツは完全に皇帝の手に落ちた、作戦大成功である。

下左はアンソニー・ファン・ダイク作騎馬姿のカール5世右はザクセン公モーリッツ

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。