1541年にミケランジェロは、システィーナ礼拝堂祭壇壁画「最後の審判」を完成させた。描かれた総勢400人以上という壮大なもの。再臨したイエスは審判者に相応しい威厳のある肉体をまとう。その傍の聖母が顔を背けているのが独特の表現である。もはや慈悲は届かない。
ラッパの下の天使は名簿を持っているが、その大きさに注目、左の天国の名簿が薄いの何の。しかし従来は司教衣を纏って描かれる聖人達も裸体である。カトリックの権威を見せつける目的は完全にはずれたといえるだろう。クレメンス7世が没し、ミケランジェロが自由に描けたのはラッキーだった。
キリストの右腕の動きに合わせて全体は左から右へ、上昇から降下へ、天国から地獄と視線が誘導される。ミケランジェロの終末は劇的である。左側でひっぱりあげる天使は右側では叩き落す。そして自身はというと、聖バルトロマイの持つ皮としてかろうじて天国にひっかかっている。
しかし当然この裸体についてクレームがついた。10年後腰布を着けよという決定がなされた。そのとき84歳の彼は「教皇様はもっと他にやることがあるだろう」と言ったと言われている。そしてこの絵を契機に劇的な表現の絵の潮流ができてゆく。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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