万能の人25-ラブレーのガルガンチュア物語

1532年ついにフランス製ルネサンスが開花を始めた。フランス語で書かれた最初の物語「ガルガンチュア物語」である。ガルガンチュアというのは、中世ヨーロッパにあった巨人伝説で、作者フランソワ・ラブレーはそれに基づきながら自由な冒険物語を書いた。後のガリバー旅行記はこれに影響されている。

作者ラブレーは、元修道士でラテン語、ギリシャ語の知識を習得するが、その後半分還俗し、モンペリエ大学医学部に入学してリヨン市立慈善病院で医者となった。人生60歳近くになり書いたのがこの物語である。

ガルガンチュア物語は、エラスムスの「痴愚神礼讃」に影響され、古典教養をふんだんに乱費して、あらゆるものを風刺するが、風刺に終わらず、主人公は戦さをしたり、快楽を味わったり、実に気ままに思う様冒険をする。知識だけでなく、王や宗教者、民衆が行動をした時代に入っているのだ。

そのマニフェストといえるのが「汝の欲するところを行え」という文である。実にきっぱりすぎる人間肯定の思想、物語ではタブーとされていた性や糞尿まで思う様切りこんでゆく。ラブレーは、この後法律的知識を得て、フランソワ1世の外交交渉でも活躍する。彼もまたルネサンス的万能人の範疇である。

下はガルガンチュア物語の表紙と挿絵

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。