万能の人22-ルター派デューラー4人の使徒

1525年、ニュルンベルク市参事会は、ルター派を宣言した。街には一時トマス・ミュンツァーが居た時期があり、カトリックも居ることで、混乱していた。このときデューラーは54歳で晩年に近い歳である。彼も宗教改革と騒乱の影響を受け、弟子が再洗礼派のテロを企み街を追放されている。

デューラーは、絵画を見ても真面目なキリスト教徒であり、免罪符のようなカトリックの腐敗は嫌悪していた。そのためルターに当初から親密感を覚え、彼の肖像画を書きたいと手紙に書き、ルターの著作を買いたいと述べている。残念ながら肖像画は近くに住んでいたクラナーハが描いた。

21年、デューラーは、帝国議会の後ルターが捕えられたときいたときは、日記に、ルターは自分達の血や汗をすっかり搾り取っている教皇のために犠牲になった、と書いている。そしてデューラーは新教となった市に、絵を寄進した、傑作「4人の使徒」である。

2枚1組の右の絵は使徒パウロの重厚感が圧倒的であり、剣を持ちこちらを鋭く見つめている。左の初代教皇ペトロは左の絵の後ろに居て、ヨハネの開いた聖書を見ている。これが教皇よりも聖書のほうが優先するという意図だろう。ルターは聖像破壊はしなかったが、重視もしなかった。デューラーはそれは気に食わず、皮肉を述べている。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。