我ここに立つ10-新皇帝とルター対面

新皇帝カール5世の初仕事は、1521年に行われたヴォルムスの帝国議会だった。皇帝はルターに対し4月16日までに出頭するよう召還し、旅行保護状を出した。ルター派では、行って処刑されたフスに鑑みて行かないよう忠告したが、ルターは行くことにした。

4月16日、ルターは到着、異端者と新皇帝の対決を観ようと議会は満員、まわりには見物人がとりまいた。ルターはこの後反乱を起こすフランツ・フォン・ジッキンゲンの兵100人に守られて来た、と教皇特使は記している。

審問は2日にわたったが、ルターは聖書の証言と明白な証拠がない限り、自分の言葉は取り消さない、と結論した。「我ここに立つ主よ助けたまえ」。まさに世俗よりも自分の信念を優先させるという近代精神の先駆けであった。皇帝カールは、次までよく考えろと、ブルゴーニュ男らしく今回は約束通り放免した。

その翌日皇帝は、残った諸侯に向かって、今後異端とは徹底的に戦う、と宣言し、ルターの保護を解いた。しかしルターは、ザクセン候フリードリヒのワルトブルク城に騎士ヨルクとして匿われた。ザクセン候の立場は微妙で、放置すると領内で反乱が起こる可能性があった。後にカールは、処刑はせずとも禁固くいらいにはにしておくべきだったと後悔する。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。