最後の皇帝3-スペイン語の話せない王

スペイン王となったカールは難渋していた。何せスペイン語も話せないのだもの。そしてまた彼の廷臣はブルゴーニュぞろいときたもんだ。フェルディナンドを追い出さなければ確実にお家騒動が起きていただろう。しかし1517年6月、フランス派の側近ソヴァージュが亡くなり、その後をいよいよカールを輝かせる名宰相ガッティナーラが継いだ。

しかしそれでも、カールはスペインにかかりきりだった。祖父皇帝マクシミリアンはというと、そろそろ自分の寿命を知り、それまでに、皇帝への道筋をつけようと、カールのローマ王への根回しを行っていた。

実は神聖ローマ皇帝を狙うもう一人の男が居た。他でもないフランス王フランソワ1世である。カールが皇帝となれば、ドイツ、ブルゴーニュ、スペインの広大な領土が彼のものとなり、フランスが挟撃される。さすがに強大すぎる、と教皇レオ10世に働きかけていたのだ。

神聖ローマ皇帝は選帝侯の選挙で行われる。そこでこの選挙はかつてない金権選挙となり、そのツケはというと、フッガー家に借り、フッガー家はますます免罪符を売って民衆からまきあげる。そして10月31日、ついにルターは「95カ条の論題」を発表して宗教改革の火ぶたを切ったのだ。

下はスペインに到着して敵と間違われて地元住民に襲われる若きカルロス王

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。