マキャベリは、フランスは裕福だが不自由、ドイツは貧乏だが自由、と喝破しているが、さすがに炯眼である。フランスは王権が強化され、貴族は王の臣下となって糧を得ていた。一方ドイツは領邦化でバラバラ、帝国都市も特権によって自由となっていた。
ルネサンスの影響で、貴族はドイツでも贅沢になっていたが、金のある都市から税金が取れない。ということで、皇帝も領主も教会も皆農民から金を取っていたわけである。そして農民は、皇帝のイタリア戦争の負担で疲弊しまくっていたし、たび重なるペストからも立ち直っていなかった。
さて、ここで免罪符を売る雄弁な営業マン、ドメニコ会修道士テッツェルが登場する。彼は「お金の音がチャリンと鳴ると、亡くなって煉獄に居るあなたの縁者の魂が助かるし、あなたも天国行き」と実に直截的なことを言ってまわった。ともかく大司教アルブレヒトと教皇レオ10世の莫大な借金をまかなうため、ミサにも乗りこんで集金をしていたのであった。
ルターの大学のあるヴィッテンベルクでは免罪符の販売は認められていなかった。しかしテッツェルは、境界ギリギリまで来ては営業してまわるので、教区からも買って帰る者が出て来る。ルターは、見過ごすことができなくなった。なぜかというと、それは世間ではなく、神と彼の問題だからだ。
下はフランツ・ヴァグナー作「テッツェルの免罪符」
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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