インディオの使徒4-摂政シスネロスへの嘆願

新大陸では、回心したラス・カサスがいくら説教で言っても、当然のことながらスペイン人が回心するはずがなかった。そこで彼は国王に直接訴えようと帰国を考える。現地のドミニコ会士やフランシスコ会士の支援を得て、1515年10月、帰国。先に植民者を批判する説教をしたモンテシーノスの紹介で国王に謁見することができた。

当時の国王は狂女ファナだったが実質国王はフェルナンド2世、しかし彼も余命いくばくもなく、宮廷は植民地から莫大な利益を得ている者達が牛耳っていた。翌16年フェルナンド2世が崩御し、トレド大司教シスネロス一時的摂政となった。シスネロスは真面目な改革派で、ラス・カサスに耳を傾け、改善策を諮問した。

3月、ラス・カサスはモンテシーノスと当代一の法学者フアン・ロペスの協力を得て、14の改善策を作成した。この中では先住民の強制労働を禁止し、先住民の村を再建して、スペイン人の村と共存させることが記された。シスネロスは、利益を得ていた者を抜いた審議会を開催し、修道士3名を調査のために派遣することを決めた。

この人選と監察がラス・カサスに任され、12月に彼らとラス・カサスはハイチに到着したが、本国では利益取得者が反対運動を展開、アメリカでも先住民を取り上げれば反乱を起こすと脅し、現地修道士も、先住民だけで何もできないと言ったため、彼らは改善を棚上げしてしまった。

下は解放されたキリスト教奴隷を祝福するシスネロス

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。