最後の皇帝1-皇帝息子カール、スペインへ

1516年6月、アラゴン王フェルナンド2世が崩御し、時代は恐る恐るページをめくろうとする。ブルゴーニュ公カール、後の「太陽の沈まない帝国」の君主カール5世となる男は、まだ16歳。しかしこのとき幽閉されている母である狂女ファナと共にスペインの共同統治者となった。

当時ブルゴーニュの実質上の為政者はマクシミリアン1世の最初の妻ブルゴーニュ公マリーの娘マルグリット36歳だった。彼女は仏王シャルル8世の王妃となりながら離婚されて幽閉されかかるという辛酸を舐めて出戻り、非常に逞しく政治的センスのあふれた小池ナントカのようなシングルウーマンとなった。

さらに多分ファザコンの彼女は、父皇帝のためせっせせっせとカンブリー同盟、神聖同盟の政治工作をした孝行娘。ところがこの頃の息子カールときたら、ルイ12世の策略にはまり、パリで「シャルル・カン」と浮名を流すおフランス好み。

神聖ローマがヴァローナを手放すように、仏王フランソワ1世と交渉したのも実はおフランス通な息子カールだった。このとき仏王は6歳年上の22歳、共にパリでブイブイ言わせた仲で気が合ったろう。その後この2人がヨーロッパで生涯にわたって死闘を繰り広げるとは夢思わなかった。ともあれカールは即位のためスペインに行く。つづく
ハンス・マカルト作「ブルゴーニュ公カールのアントワープ入場」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。