万能の人9-フィレンツェの巨人ダヴィデ

フィレンツェに戻った2人の天才、ダ・ヴィンチとミケランジェロは一人ではいれなかった。フィレンツェ羊毛組合は、以前から大聖堂の補強壁のところに、愛国心高揚のために、旧約聖書の英雄の彫刻を創る構想を持っていた。そして当時2体が完成したのみであった。

この彫刻の依頼は、ダ・ヴィンチにもされたらしい。ところが、大理石彫刻は好きではない。彼の絵画論では、彫刻家は汗だくで、泥だらけになる、と書かれている。それに対して画家は、室内で、美しい場所で、軽やかに筆を動かすことができる。ドラマではだいたいこれで2人が喧嘩をする。

この彫刻のための大理石は以前から用意されていた。5mはある石をミケランジェロは彫りたいと願っていて、結局彼にまかされて1504年に有名なダヴィデ像が完成することになる。フィレンツェ市民からは「巨人」と言われた。

ダヴィデのミッションは「戦意高揚」である。共和国は強大な敵チェーザレに狙われていた。ミケランジェロのダヴィデは従来の勝利した姿ではなく、まさに敵に立ち向かう姿である。ギリシャ彫刻のようだが、一点を見つめる目、血管が浮いた腕で美ではなく意志を表す。キリスト教と古典を人間の観点から統合するまさにルネサンス。ところで一方のダ・ヴィンチは、なんとフィレンツェを脅かすチェーザレのもとへ旅出つのだ。

下はダヴィデ像、ミケランジェロは下から見上げることを想定しており、このほうがはっきりする。

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キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。