万能の人4-最後の晩餐ダ・ヴィンチの神学

そして1492年、ミラノの僭主ロドヴィコは、ブラマンテにサンタマリア・デル・グラツィエの改修を命じた。その食堂に描かれたのが有名な「最後の晩餐」であり、ダ・ヴィンチにとって初の大仕事であった。94年指名があり、95年から98年で完成させた。

画題はユダの裏切りを予言した瞬間であり、弟子達が立ちあがり動揺している劇的な場面が描かれている。しかし12人は3人ずつ4組にまとめられて、ユニットは三角形の構図。中央のイエスはまさに正三角形で、5つの三角形が構図を調和させているのだ。

後ろの窓も3つ、つまり三位一体。三位一体とは父と子と聖霊だが、窓の外は父、そして子のイエス、その右手の前には葡萄酒、左手はパン。カトリックのミサは最後の晩餐への感謝であり、イエスが死して復活し、その身はパンと葡萄酒となって信徒に食べられ、聖霊を与える。

ダ・ヴィンチは、この絵において、一見悲劇でありながら、その後のキリスト教の秘跡となる秘められた神の計画を表現しようとしているのだ。彼が最も苦心したのはユダで、仕事を中断しては貧民街を歩きまわったようだ。従来の絵と違い、ユダと使徒は同じ側、彼も神の計画の一部というのだろう。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。