イタリアの春9-名画「春」秘められた鎮魂

1480年イタリアルネサンスを代表する傑作ボッティチェリの「春」が完成した。右手前の女性が春の女神だと言われ、花が咲き誇る春にふさわしい情景である。そして中央には愛の女神ヴィーナス。この「愛」は新プラトン主義的な美への愛であり、人間を天上へと導くとされる。

82年には、これも傑作「ヴィーナスの誕生」が完成する。春のヴィーナスは地上の愛、誕生のヴィーナスは天上の愛を意味し、天上から地上に生まれ、また天上に昇っていく、新プラトン主義的な愛の上下運動を意味しているといわれている。

「春」の注文主はロレンツォのようだ。そしてここに描かれた春を謳った詩人ポリッツァーノは、パッツィ事件でロレンツォを救った男である。この絵は、実はパッツィ事件の「冬」の鎮魂と新しい春への希望という解釈は時期的に説得力がある。亡くなったジュリアーニの恋人やロレンツォの愛人が摸されているという説もある。

またヴィーナスの誕生も、ジュリアーニの恋人絶世の美女シモネッタへの賛美が隠されているという説もある。いずれにせよ、パッツィ事件はロレンツォの心に深い足跡を残しているのだろう。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。