「それでも地球は動いている」というのはガリレオの有名な言葉だが、実はガリレオよりもコペルニクスよりも前に地動説を唱えた学者が居た。その人の名はニコラウス・クザーヌス、1401年ドイツ生まれのれっきとした枢機卿である。彼は1440年に「知ある無知」という主著を出したが、この書に「地球が運動していることは明らかだ」と書かれている。
その頃には航海術から天体の研究も進んでいたのだろう。彼は大宇宙という概念を示し、神は他の天体も含めて大宇宙を統括しているに違いない、と考える。すると一つの天体である地球が中心の筈はない、というわけだ。それどころか、何と他の天体にいる宇宙人まで存在を認めている。人間の住む地球に特別な地位を認めないところでは恐るべき説といえる。
さらに彼は数学などを用いて「対立物の一致」という考えを唱えた。例えば円と直線は対立しているが、無限の大きさの円を考えればその孤は直線になるではないか、という。つまり彼は我々の目には対立しているものでも神の目からは対立していない、というのである。
また彼は宇宙は個々のものの中に縮減しており、その可能性は運動によって時間的に展開し、その運動は必然性。実はヘーゲルも彼に影響されている。この考えでは、人間の中にも神が居て、一歩一歩人間は神に近付いていける。彼は聖職者らしく、最後は神の恩寵とするが、この考えはルネサンスの人文主義やコペルニクスにまで大きな影響を与えたのだ。
下は故郷の街にあるクサーヌス記念プレート
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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