オルレアンの少女39-追い詰められたコーション

もはやこれは裁判ではない。審問者の質問は「私は人を殺したことはない」という回答を引き出し、列聖の証拠となる。第5回審問では7年以内にイングランドはオルレアン以上のものを失うと予言し、後に的中させる。もはやどうしようもない審問者達は「教会に従わないのか」と言いだした。

しかしジャンヌは「教皇様の前に出ればすべてお話しします」と答えた。実は教皇特使は、この裁判に不満を持ち、教皇に報告するとしてヴァチカンに帰ってしまったのだ。判事の何人かも、ジャンヌの啓示を悪く解釈してはいけないと言いだしてしまった。

「あの女は実に抜け目がなかった。女特有のずるさを備えていた」と復権裁判で判事は語った。幸か不幸か復権裁判までコーションは生きていなかった。イングランドは「処刑できなければこちらに引き渡せ」と言い、パリ大学は不信をもって、裁判はこちらが引き継ぐと言ってきた。

追い詰められていたのは実は裁判をしたコーションだった。もう何でもいい。自分のメンツも投げ打って、ともかく判決を下すしかない。

下は現代美術の奇才ベルナール・ビュッフェの描く「ジャンヌ裁判」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。