オルレアンの少女38-悪魔の罠を退けた神の回答

ノーベル賞作家バーナード・ショーを感動させ、その後ジャンヌ処刑裁判物語のクライマックスとなる有名な応答がなされたのは、ジャンヌが優勢となったこの場面で、である。ジャンヌは「神のお恵みを受けているのか?」という審問に対し、「もし私が神のお恵みを受けていないのなら、どうか浴させて下さいますように。もし受けているのなら、どうかこのままでいさせて下さいますように」と返答したのである。

後の復権裁判での証言で、そのときの書記は「彼女を尋問した人は皆茫然としていた」と述べたから、啓示問題でのジャンヌの勝利は確定したのである。この問いはYESと答えれば、不敬傲慢の罪、。NOと答えれば異端を認めたことになり、どちらを答えてもダメなのだ。よくそ即座に答えられた。

審問者達は我知らずマタイ福音書の言葉を思い出したであろう。「引き渡されたときは、何をどう言おうかと心配してはいけない。そのときには、言うべきことは教えられる。実は、話すのはあなたがたではなく、あなたがたの中で語ってくださる、父の霊である」自分達は何者か?と思わなければ嘘である。もしや迫害者の立場ではないのか、と。

何とここで裁判は一旦休廷になってしまった。審問者達の動揺っぷりは普通ではない。パリ大学の碩学達が揃いも揃って神学で田舎娘にやられるとは。もはや残っているのは醜いメンツのみであった。まるでイエスキリストを問い詰めようとして失敗し、処刑しようとした当時の律法学者達のように。

下は日本でも演じられた笹本怜奈主演バーナード・ショーの「聖ジャンヌ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。