ポアティエでの審問中、ジャンヌはもう訪問者をつかまえてイングランドへの降伏勧告文書を書かせている。有名な文「イエス、マリアの御名において申す。イギリス国王、汝らはすみやかに天上の王に服すべし。汝らが奪いかすめし諸都市の鍵を天上の神から遣わせし乙女に返納いたすべし」格調高きかなりの長文である。
これを見て証言したゴベール・ティボーという従士は、戦闘にも従軍するが、兵士達はジャンヌに欲望を抱くことはあっても、彼女が来るともうエロ話もできなくなり、性的興奮が突如なくなってしまったという話を証言している。まあ男性にモテモテだったシエナの聖カタリナもそうだったようなので、聖女というのはそういう力をもっているのだろう。
審問に合格すると、ジャンヌには正式に武官2人、小姓2人、伝令使2人がつけられた。5頭の立派な馬ももらって、正規の司令官だったということが窺われる。そして部隊としてジル・ド・レや阿修羅といわれる猛将ラ・イール、サントライユなども加わり、後のジャンヌ戦隊の骨格ができていくのである。
ここでジャンヌは、軍隊に付きものだった娼婦達を追い出し、略奪を厳禁し、涜神や呪いの言葉を禁止、さらに兵士達に告解をさせた。ライールなどとも喧嘩してほんとに告解をさせたから驚くのだ。ジャンヌのつくったイエスマリアの軍旗にまず僧が聖歌を歌いながら行進した。全盛期の十字軍でさえこんなことはなかったろう。毎日これを繰り返すことによって、短期間で聖戦の軍に変えてしまった、という指摘はよくなされている。
下は娼婦を追い出すジャンヌ・ダルク
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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