物語に入る前に基本的な誤解を確認しておこう。ジャンヌ・ダルクは魔女で処刑されたのではない。実は最終的な罪は『男装』ウソのようなホントの話。それくらいしか罪が着せられなかったのだ、マジかよ。ホントなら処刑はできなかった英国軍の無理づけ。
そしてだからこそ、ヴァチカンは後ほど復権することができた。当時ヴァチカンとパリ大学は対立しており、大使が裁判を教皇に訴えると帰ってしまったのだ。教皇は火刑の責任を免れた。これは同時代に起こったヤン・フスの火刑とまるで違う点だ。
ジャンヌはまた、中世末期に起こったジャックリーの乱などの民衆反乱の直接の子孫でもある。反乱した者達も神意を語って処刑された点ではジャンヌと同じである。そしてその者の代表としてジャンヌは後生認められ、最終的にカトリックの聖女となった。
1920年のカトリック列聖は、いろいろな障害があったが、結局動かしたのは信徒=民衆の支持だった。それは19世紀にジャンヌと同じような少女ベルナデッタが聖母の声をきいてルルドの泉をつくってから始まるカトリックの民衆革新の流れだった。それに続く民衆聖女リジューの聖テレーズはジャンヌ・ダルクのファンで、聖テレーズの思想はマザーテレサへとつながる。思えばキリスト教は一人の少女マリアが神の声をきいたときに始まったのである。
下はエリザベス・ソレル作「聖母と聖ジュヌビエーブと聖ジャンヌ」
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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