百年戦争15-英王領地奪回されて孤独死

人の運命はわからない、勝ちに奢らずである。クレシー、ポアティエ2連勝でフランスの3分の1の領地を持ったエドワード3世だが、1369年女傑で才女の王妃フィリッパが亡くなると、愛妾アリス・ペラーズにすっかり溺れてしまうのだ。子も三人生んだ。しかも国政に口を出させる。

フランスでは、70年にイベリア半島よりデュ・ゲクランが帰還するや大元帥に就任した。12月4日、味方となったブルターニュ公軍と連合して、ポンヴァヤンの戦いでイングランド軍を急襲し、長弓を使う暇を与えず撃破した。ここに無敵のイングランド軍に初めて土がついたのである。72年には北アキテーヌを奪回し、8月にポワティエ入城を果たした。

仏王はノルマンディーの兵器工廠クロ・デ・ガレを再建し、海軍を強化。カスティーリアと連合して、ラ・ロシェル沖の海戦でこれまた無敵のイングランド海軍を打ち破ってしまった。ゲクランの戦法は、ゲリラ戦で敵を分散させ、急所のみを急襲する戦略的攻撃を多用してこれまでの戦争を一変させた。それを可能にしたのは財政改革でつくった3400の常備軍であった。

頼りのエドワード黒太子も病気をしてからは軍務につけず、イングランドの領地は「再征服戦争」でフランスにほぼ奪回されてしまった。1377年6月21日、英王が崩御する日、愛妾アリスは亡くなる前の王の手から指輪を抜き取り、宝石をすべてかき集めて、召使い共々離宮をトンズラしてしまった。王のもとに最後まで居たのは聖職者1人だったという。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。