ペスト襲来6-鞭打ち行列と風俗の乱れ

ペストがイタリアで蔓延したとき、まず思ったことは「神の怒り」ということだった。実際、最初に起こったヴェネツィアにしろジェノヴァにしろ、湾岸都市は皆快楽と贅沢に溺れ、神を畏れぬ生活をしていたのである。フランスでは新時代の戦争規模の拡大に慄いていた。解雇された傭兵は各地で乱暴を働いた。

当時の人達が恐れていたのは臨終のときの秘跡を受けられないことだった。しかし聖職者もペストで亡くなってできなくなった。というより病人や臨終に立ち会う真面目な聖職者がまず亡くなった。大勢が集まるミサは、開催が困難となった。各地で鞭打ち苦行者の行列ができた。「メメントモリ(死を思え)」という標語がリアルなものとなり、「死の舞踏」が描かれた。

しかし悔悛の情を示してもペストは止まらなかった。しかもペストは通常の死に様ではない。毎日毎日、あれを見て聖職者も居ない。道徳が崩壊しても不思議ではない。死を免れた人で、ともかくいつ終わるかも知らぬ現世を楽しもうとした人も少なくなかった。

若者では「性器やお尻がほとんど見えそうな」短い上着が流行したとのことだ。金持ちの若者は、財産を使い果たそうとして、単に割るためだけに高価な食器を買った者も居たそうだ。こんな狂った世相の中で、新しい精神が生まれる。ボッカチオとペトラルカである

下はデカメロンの風景。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。