世界大戦への道32-聖フランチェスコの祈り

教皇ピウス10世は、サラエボ事件の後オーストリア帝国皇位継承者カール大公に、戦争を避けるよう父皇帝を説得するよう手紙を送っている。しかしついに世界大戦が始まり、自分の治世に未曾有の戦争が始まったことにショックを受け、1914年に帰天した、カトリックの影響力も小さくなっていたのだ。

その後を継いだベネディクト15世は、14年11月に回勅を出して戦争の愚かさと、戦争に参加しないよう各国に訴えた。そしてイタリア参戦を食い止めようとしたが願いむなしく協商側で参戦、またドイツのベルギー侵攻を非難して、オーストリアとの関係がまずくなった。

しかしこの時代、聖フランチェスコのものとされる「主よ私を平和の道具にして下さい」という祈りが普及してゆく。この祈りが最初に公になったのは1912年パリの信心会の「鈴」という雑誌に初めて掲載された。この祈りがノルマンディーの信心会の「平和の聖母」に引用される。

さらにこの雑誌をたまたま読んだロシュトロン・グラント侯爵がこれをフランス中に広めようと、ガスパリ枢機卿に手紙を送り、これが教皇ベネディクト15世に渡ってこの祈りをカトリックに紹介した。その後フランシスコ会もとりあげ、それをプロテスタントがこれを聖フランチェスコの祈りとして紹介した。伝言ゲームのような話だが、民衆が平和を希求するなかでこの祈りが普及したのである。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。