第一次世界大戦が始まった1914年の9月10日から数週間、画家マティスはフランスの南端の港町コリウールに滞在した。そのときに描いた窓の外の風景はなんと真っ黒である、実は風景を描いているのだがそれを塗りつぶしたのだ。1905年にも同じ風景を描いたがこちらは海の風景、マティスはこの絵を未完成としてずっと手元に置いていた。
戦争は都市の風景を変えてしまった。ピカソはパリで迷彩を施したトラックを見て「これこそキュビズムだ」と言ったという。そういう意味では前衛芸術家が考えていた世界が戦争で到来したといえなくもない。芸術によって象徴的に破壊された旧世界は本当に破壊されたのだ。
しかし現実の破壊は「もうたくさんだ」という心を呼び起こしても不思議ではない。第一次世界大戦中に秩序や安定性を求める精神風土が生まれ古典回帰が始まっていく。1917年にイタリア旅行をして古典芸術に触れたピカソは具象芸術に回帰した.。
この時期、恋愛遍歴を繰り返していたピカソはロシア貴族の娘オルガと結婚して安定した生活を得ている、そして人間の肉体の造型を讃えるのである。。あの音楽の破壊者のストラヴィンスキーもまた一転してロシアの民話を土台にした簡素な音楽を作曲する。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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