第8回十字軍11-聖王の犠牲聖地十字軍終了

ルイより少し先に妹が帰天している。福者イザベル、彼女はフリードリヒ2世の子との政略結婚を拒否して修道女になり、兄の援助でロンシャン修道院を設立して、貧者と病者に生涯を捧げ1270年2月に帰天。そして兄の最期の命令も戦争の継続ではなく平和だった。

兄の死に間に合わなかったシャルルは、疫病にやられた軍をシチリアに帰還させた。しかしここでさらに不幸が襲う。大嵐が到来し、船が沈没し、千人単位で兵が死亡した。航海中にやられなかったことだけが不幸中の幸いだった。

上陸したとはいえ、アフリカで罹った疫病で、王族が次々に亡くなった。新王フィリップ3世は先に帰路についたが、南イタリアで洪水に遭遇して、王妃が落馬、身重のまま亡くなってしまった。ローマからフランスに帰る十字軍はまさに葬列そのものであった。

1271年、ルイ9世の遺体はパリのノートルダムで公開され、ミサを受けて彼がつくったサンドニ大聖堂の王家の墓に葬られた。ヴァチカンの落胆は察するに余りある。結局ルイ19世の犠牲によって約200年続いた「聖地奪回」の十字軍は終わりを告げた。それは神の御業かどうかは神のみぞというものである。

下はルイ9世の柩を運ぶ息子フィリップ3世

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。