現代芸術16-原始回帰「春の祭典」

1913年、遂に調性だけでなく、リズムなどこれまでの西洋音楽の決まり事をことごとく破った作品が上演された、ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」である。この作品はロシアの古代の春の祭りを描いているとされるが、人身御供があり、その女性はエクスタシーに入り、死ぬまで踊り続けるというのである。

初演は、ロシアの民族衣装で行ったが、実際ロシアとは限らず、音楽はアフリカ音楽のダイナミックなリズムを取り入れている。後にベジャールがやったように、バレエの衣装で肉体のダンスを踊るのがふさわしい。さまざまな演出が可能で現代芸術の古典としての魅力を持っている。

西洋のキリスト教の神が死んで、古代の地母神が根源的なものとして復活する。ひと時代前なら一笑に付されただろう。しかし帝国主義は、アジアアフリカを支配し、近代化の名のもとで現地人を非人道的に抑圧した。さらに抑圧したのはブルジョア以外の労働者達もそうであり自由・平等・博愛は名前だけのものとなる。

階級発生前の古代人達は、皆平等の共同体だったという前提がある。人を抑圧する近代以前への回帰が大きなバックボーンとなっており、それは社会主義者が唱えた「共産主義社会」にも通じてくる。先進的芸術家達は、西洋近代の行き詰まりを察知して表現していたが、近代の矛盾は遂に爆発するのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。