現代芸術8-ミュシャ「スラブ叙事詩」

1910年パリで成功したミュシャは故国チェコに戻った。そこで彼は愛する祖国のために壮大な「スラブ叙事詩」を描く。この絵画にインスピレーションを与えたのはスメタナの「我が祖国」だと言われている。この交響詩はチェコの人々に深く影響を与えていたのである。

19世紀後半から工業に欠かせない石炭がチェコに豊富に採掘され、それを起点に産業革命が起こっていた。そしてプラハでは人口が急増した。オーストリア帝国ではハンガリーは二重帝国として同等の自治を勝ち取っていた。しかし帝国の3都の1つにもかかわらず、チェコのスラブ人の地位は低かった。

独立運動の集会を禁止されていたチェコ人達は、何とソコルという体育運動協会をつくり、それを隠れ蓑に民族独立の意識を高めた。1912年には全スラブソコル大会が数万人の規模で開催された。ソコルの体育館には図書館もあり、講演会も行われて、民族教化の役割を果たした。

1911年プラハの市民会館が建設され、ミュシャはその市長の間の壁画を無償で引き受けた。そして最大の仕事は、チェコの守護聖人聖ヴィートを記念するプラハ城内側の聖ヴィート大聖堂のステンドグラスである。この大聖堂は1300年から建て増しが進みまだ未完成だった。そしてチェコ人によって完成されるのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。