聖王の御世9-近代科学の祖ベーコン

さてさらにこの時期のパリ大学に、イギリス経験主義の祖、近代科学の祖といわれる「驚異的博士」ことロジャー・ベーコンも居たのである。彼はすでにオックスフォード大学でアリストテレスを教えていた。そして1533年にヨーロッパ最高といわれるパリ大学に行ったのである。

ベーコンは、イスラム科学を学び、実験や観察を重視した。自身も科学研究を行い、特に光学の研究では、眼球に光が像を結ぶ仕組みも緻密に研究している。彼は、光は像だけでなくもっと多くのものを伝搬していると考え、天体の光が、人の運命をも影響していると考え、天体も研究した。

彼は、異教徒の哲学も唯一の神から与えられたものであると述べ、むしろ道徳哲学については、ローマのほうが高度であると述べている。そして異教の道徳哲学もキリスト教の神学も神に一致するという。プラトンなどは三位一体にも辿りついていたとまで主張する。

ベーコンは、教皇クレメンス4世に自分の思想をまとめるよう促され、著作を献呈した。しかし教皇が亡くなると、彼が入っていたフランシスコ会から、アラブ思想を広めたとして、帰国した1278年頃から10年もの間投獄され、イギリス貴族の訴えで放免された。ベーコンの権威よりも検証を重んじる考え方が宗教改革にもつながっていく。

オックスフォード大にあるベーコン像

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。