1907年ピカソの革新的絵画「アヴィニョンの娘たち」が完成した。この女性はバルセロナの下町の娼婦である。男性が店に入ったとき「いらっしゃーい」と出てきてポーズを取るところが表現されている。これまでのピカソは社会の最下層の人々を描いてきた。ところがこの絵では逆転しているのだ。
これまでロートレックなどが描いた怠惰そうな娼婦と違い彼女達は堂々とポーズを取っている。右2人はアフリカ彫刻、中央2人はイベリア彫刻、左はエジプト美術の影響が見れる。つまり原初の生を生きている人はユートピアではなく現実に居るというのだ。
ピカソは開き直ったともいえる。上層下層、西洋人が上で黒人が下というのは社会が決めた尺度である。しかしアフリカの黒人のつくる彫刻はすばらしいと思った。人間の姿形そのものではなく、その中の生命こそ描かねばならない。その後ピカソは対象を見つめ分解し、本質的なものを組み立てていく。
この革新的絵画はこれまでの絵画とまるで違い、20世紀芸術の発火点となった。芸術家はこれまでの伝統にとらわれることなく、様々な実験を試みていくことになる。しかし当時は同じキュビズムの画家ブラックでさえ「ガソリンを飲んで火を吐いているようだ」と言ったそうで、アトリエで裏返しにされて10年間眠っていた。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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