聖王の御世3-フェデリコとバラの聖女

早すぎた男フリードリヒ2世こと皇帝フェデリコ。彼はシチリアというローマ時代の残る地で古典を学び、イスラムの先進性にも触れた。父といっていいインノケンティウス3世の甥グレゴリウス9世との相性は最悪だった。教皇が高飛車でなければここまでの悲劇は起こらなかったかもしれない。

しかしフェデリコもカトリック的皇帝を演じられなくもなかったのだ。1236年聖女エリザベートの儀式には自分の信仰心を見せつけるために、裸足と粗末な身なりで、聖遺物として頭部を切り取っている。このときはグレゴリウス9世も満足したのだろう。

聖エリザベートは、ハンガリー王家の生まれで、チューリンゲン伯爵ルートヴィヒと結婚、聖フランチェスコの教えに触れて、貧民や病者のために尽くした。夫が不信がり、何を持っているのか質したところ、持っていた貧者のためのパンがバラに変わって難を逃れた「バラの奇跡」で有名である。

夫は十字軍遠征で亡くなり、未亡人となった彼女は家を追われた。そのとき再婚の候補の一人がフェデリコだったが、彼女は拒否し、貧者のために病院を建てて一生を捧げた。ポーランドの聖アグネスといい、彼は聖女が好きになるようだ。ひょっとすると、教皇のような見せかけではなく、本当に聖なるものは信じていたかもしれない。

下はカール・フォン・ブラート作「聖エリザベートの薔薇の奇跡」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。