ロマン派以後13-マーラーアダージェット

1902年、アダージェットが有名になり一番有名なマーラーの交響曲第5番が完成した。この年の3月にアルマ・シントラーと結婚し、美しいアダージェットは彼女に捧げたものと言われている。アルマは、当時芸術家や知識人の間のミューズで、あまり夫婦仲はよくなかったが、彼の伝記を書き有名にしたのは彼女である。

マーラーはベートーヴェンを敬愛しており、この5番も「運命」を意識して、暗から明へのベートーヴェン的構成をつくって一番すっきりしている。実はベートーヴェンの9番などを自分で改訂して演奏させ、「これがベートーヴェンの意図するものだ」とうそぶいた。

そうした態度は、保守的な観客からも批評家からもさらには楽団員からも批判されることになった。またそれに「君たちが芸術と呼んでいるものは安逸と怠惰以外の何物でもない」と反論するのだから、ますます騒動は大きくなる、そして「ユダヤの猿」と人種的偏見も出る。

そういうわけでとうとうこの前年の01年にはウィーンフィルの識者を辞任してしまった。マーラーは歌劇場の芸術監督は残ったので、その間を利用して作曲に専念するようになった。そして妻アルマの縁で、クリムトなどの先進的な画家とも親しくなり、この後ますます突っ走る。アダージェットは束の間の安らぎだった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。