さて、アール・ヌーボーというと代表はなんといってもエミール・ガレだが、彼らは「ナンシー派」と呼ばれる芸術の一派である。実はフランスの古都ナンシーは、普仏戦争のドイツへの割譲を免れた。彼らはここでその復興も含めて芸術文化活動を行った。
そしてそのシンボルとしたのが「アザミ」という花である。ロレーヌ公ルネ2世は、1477年ナンシーの戦いで、ブルゴーニュ公国のシャルルを打ち破った、その紋章がアザミである。さらにアザミの花言葉は「独立」「報復」「触れたら刺す」というものだ。
ガレは花瓶やガラス食器などさまざまなところにアザミの文様を使い、ロレーヌへの想いを作品化した。また由緒あるガラス工房ルイ9世にちなむ「サン・ルイ」は、豪華なワイングラス「ティスル(アザミ)」を制作した。ナンシー派のドーム兄弟もアザミの花瓶を制作している。
そして1903年にはパリのルーブル宮で「ナンシー派展」を開催した。ガレは翌04年に亡くなるが、故郷愛はフランス全土に行きわたった。ロレーヌ公国は、マリア・テレジアの夫フランツ1世が統治していたこともあるのだが、フランスのドイツへの恨みの象徴となってしまい世界大戦の一因となるのだから人の世はやりきれない。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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