実はヴィルヘルム2世のドイツは当初親英路線だった。1890年にはヘルゴランド=ザンジバル条約を結び、ドイツはナミビアを獲得した。それに亀裂が入ったのは1896年の「クリューガー電報事件」である。ここに出てくるクリューガーとは南アフリカのボーア人の共和国トランスヴァール共和国の大統領。
86年に同共和国は金鉱が発見され、ゴールドラッシュとなった。白人の流入に危機感を感じたクリューガー大統領は、選挙権を14年以上在住する白人に限った。これが気に入らない当時植民地相となったセシル・ローズらはここに介入を企てる。対してクリューガーはドイツに接近した。
そして遂に95年、セシル・ローズの友人のジェームスンが600人ほどの民兵を引き連れて共和国に侵入する。しかしさすがにこの兵力ではどうにもならずこの試みは失敗し、この事件の責任でセシル・ローズはケープ植民地の首相を辞任した。
しかしこの事件のあと、ドイツ皇帝はクリューガー大統領に、独立を守ったことの祝電を送ったのである。関西弁で「いらんことしい」という言葉があるが、やったところで何の得もなく、むしろイギリスの世論を敵にまわしてしまった。そしてドイツはイギリスに対抗して海軍を強化し「建艦競争」を仕掛ける。これをきっかけにイギリスはドイツと離れていくのである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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