ベルエポック47-大英博物館の窃盗人

この時代のイギリスには「イギリスにとっていいことは世界にとってもいい」という人間が大勢いた。その一人が大英博物館で美術収集にあたったウォーリス・バッジである。彼は1886年よりエジプトでの美術収集を行った。

もちまえの語学知識を生かして第1回エジプト行きでは、1500点もの収集を行い、イギリスに持ち帰った。しかしエジプト古代博物は国外持ち出し厳禁であり、イギリス総領事も認めていた。彼は市中で盗掘された博物を買いあさり、なんと軍事物資に見せかけて軍艦に乗せて持ち帰ったのである。

そしてその中で盗掘者ともネットワークができ、ある日すごい出物があるとの手紙を受け取る。バッジはさっそくエジプトに出かけ、なんと盗掘現場まで出かけて見分した。その最高のものが、美しい彩色を施された「アニのパピルス」である。しかしそのときバッジは尾行されて警察に囲まれた。

バッジは逮捕状が出る前に、隠し場所の民家の隣のホテルからトンネルを掘ってまでアニのパピルスをまた軍艦で持ち替えらせた。どう見ても犯罪である。バッジの理屈としてはエジプトの保管状態が悪く、きちんと保存するのはイギリスが一番ということだ。イギリスも自分の国の文化的権威が欲しく、バッジの行為を黙認していた。イギリスはいまだに古代博物の返還に応じていない。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。