パリ万博では、やはり植民地コーナーが設けられ、現地の生活や文化が紹介されていた。そこで衝撃を受けたのが音楽家ドビュッシーである。彼はジャワのガムラン音楽に「パレストリーナの対位法など児戯れに等しい一種の対位法」を聴くのである。そして「我々の打楽器の音など場末の野蛮な音にすぎない」とまでいう。
しかし主流の音楽家は全くの反対、大御所のサン=サーンスなどは、べトナムの舞踊に「喉を斬られた獣のうめき声」と酷評をする。ところがドビュッシーは、バイロイトと比較できる」というほどの評価を与えるのである。
彼はこれを機にワグナーのロマン派音楽から離れ、ガムランの神秘的な響きを取り入れた音楽を作曲していく。その影響が顕著に出ているのが、1893年に作曲されたピアノ曲集「版画」の中の「塔」という作品である。タイトルの「版画」というのは「浮世絵」塔というのは仏教の「パゴダ」を意味している。
この頃になると、オリエンタリズムやジャポニズムはパリを中心としてヨーロッパを席巻しつつあった。そして西洋芸術はそれを取り入れて新たな領域を創造する。西洋モダニズムの集大成といえるパリ万博から、反モダニズムが始まったのはなかなか興味深いことである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント