ベルエポック45-ウィーンの反ユダヤ主義

1886年、オーストリアで選挙権が大幅に拡大し、5グルデンを納税していれば選挙権が与えられた。但しオーストリアの場合、3つに選挙権者が分かれており、その3分の1だけだったが。しかしこのことがウィーンを中心に反ユダヤ主義を勃興させていくのだから皮肉なものである。

ウィーンのユダヤ人は激増していた。オーストリア帝国各地で民族主義がもちあがり、ユダヤ人は自由を求めてウィーンへ流入したのである。その中にはウィーン万博以後の不況で抜け目なく優良株の底値買いを行って資産を増加させた銀行家のトデスコも居り、市民から嫌われた。

しかし大部分のユダヤ人は、小規模な商工業者である。ところが地元の商工業者は彼らを恐れて排斥にまわる。なんと「ユダヤ人から買うな、キリスト教徒から買え」というボイコット運動が起きた。新しい5グルデン有権者は実はこの小規模商工業者だったのだ。

資本主義の進行により小規模商工業者は没落の危機にあった。反資本主義と反ユダヤが簡単に結びつき、大規模な反ユダヤの感情が大きくなっていった。彼らは、中世の職業的なギルドへの回帰を夢見て、超保守的な思想にハマっていく。これはドイツやフランスでも同じ傾向を持った。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。