華やかなベルエポックの陰で富の格差がどんどん開いていった。特に中小商業者が没落していく。資本主義システムなど難しいことはわからない彼らは、目に見えるものに執着する、ユダヤ人のせいだ、と。そしてそういう意識を扇動する者がいつも現れるのである。
エドゥアール・ドリュモン、1886年出版された「ユダヤ化されたフランス」は200版を越えるベストセラーとなった。そして彼が創刊した日刊紙は20万部を越え、下院議員にも選出される。彼によればフランスはユダヤ人に征服されている、その契機はフランス革命であると。
フランス革命によって古きよきカトリック的フランスが解体され、金が神に代わり、労働によって汗をかかず金を貸すだけで儲けるユダヤ人が幅をきかせる社会になり、善良なカトリックフランス人は虐げられ、金の子牛を拝む国民になりさがったというのである。
金融資本だけでなく、彼はマスメディアも叩くが、これもユダヤ人の活躍する業種だった。保守的な国民が信じているカトリックを上げるのが彼の上手だが、伝統回帰は扇動家の得意技。こうして民衆の格差へのうっぷんの堆積が反ユダヤ主義に誘導されていくのである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント