ロマン派の時代63-ロダン「地獄の門」

1880年、彫刻家ロダンに国立美術館を建てるときのモニュメントの依頼があった。ロダンはイタリア旅行でミケランジェロに影響されて77年に「青銅時代」という作品を発表して高い評価を得ていた。ミケランジェロとダ・ヴィンチの彫刻と絵画の論争の逸話があるが、バロックから彫刻は絵画的になっていた。

ロダンはミケランジェロのように、肉体を使って人間の内面を表現しようと思う、そしてこの大作にギベルティの「天国の門」の向こうを張ってダンテの神曲をモチーフにして「地獄の門」を創ろうとするのである。しかし地獄をつくるのは壮大すぎてなかなかまとまらない。

そのあがきの中で、才能ある美人カミーユ・クローデルと出会い、不倫に陥った。優柔不断なロダンは迷い、夫人の病気で夫人のもとに帰るが、今度はクローデルがショックで生涯精神病院の中で過ごすことになる。何のことはない、地獄はロダンの心の中にあると気づくのだ。

発注が中止になってもロダンは「地獄の門」を創り続け、その中から独立した作品が出て来る。しかしそれは皆苦悩にまみれ、よじれた人間の姿となっている。「地獄の門」は未完となったが、その中心であるダンテの姿が89年に制作された。「考える人」と呼ばれる像は全身で自分の中の地獄を見るロダンの姿だった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。