ベルエポック19-インド皇帝ヴィクトリア

1876年初頭、ヴィクトリア英国女王は、首相ディーズレーリに、自ら国会を開会すると宣言した。そのココロは、というと「インド皇帝の称号がほしい」というのである。異論が出るのがわかりきっているこの提案に、ともかく開会宣言だけで、あとは自分が引き受けるとなだめて引き下がってもらった。

政府が国会に提案するや、政敵グラッドストンを始めとして異論続出だった。彼らは世界で一番の称号はイギリス女王だと思っていたからで、皇帝を欲しがるなど田舎者まるだしと思われると辛辣に延べた。しかし女王が意識していたのは復活したドイツ皇帝なのである。

しかしこの法案は議会を通過し、翌77年1月1日より、デリーで「帝国会議」が開催され、ムガール帝国様式にのっとった「大謁見式」が行われ、インド各地から藩王が祝賀に集まったが、皇帝はイギリスを動かず、事実上の植民地化宣言だった。その間インドでは大飢饉が発生し、525万人が死んだ。

大英帝国といいながら、正式にイギリスが宣言したことはない。しかしこのインド皇帝の宣言は、列強がアジアアフリカを植民地化して属邦とする時代を正式に宣言したのである。欧米列強はもうおおっぴらに植民地をつくり、20世紀は帝国主義の時代となってゆく。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。