エルネスト・ルナンの「イエス伝」は宗教のみならず、絵画にも影響を与えた。これまで中東と切り離された欧州では、欧州的聖書宗教画が描かれた。しかし中東が身近になった今、中東風景に即した絵画を描くべきだという。そこでまたもやオリエンタル絵画ブームが訪れる。
従来のオリエンタリズムでは、オリエントは奴隷が残り、放埓と怠惰で侮蔑すべき対象となった。ところが今回のオリエンタリズムは、合理化されて面白くない唯物主義的な西洋に対し、神秘的で精神的なオリエント=東洋という意味づけがなされた、まあなんと勝手な。
その新オリエンタリズムの象徴たる作品が1876年に発表されたギュスターブ・モローによる「出現」「刺青のサロメ」である。サロメとは新約聖書で、母に言われて洗礼者ヨハネの斬首を要求しただけの娘である。ところが時代を経て東洋の神秘と官能を同時に表す象徴として表現されている。
すでにアングルやドラクロワのハーレム絵画で、オリエント女性=ヌードという印象は定着していた。しかしそれが膨張してヌード=アダムとイブ=楽園と解釈される。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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