印象派革命4-ルノワールの共和制

1877年ルノワールの人気作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」が第三回印象派展に出展された。この場所はモンマルトルにあり、第二帝政時代に焼き菓子(ギャレット)を売っていた商人が風車(ムーラン)の近くでダンスホールを開いたのである。天気のよい日は外で踊った。

人物の顔がわかるのは前の数人だけで、あとはわからない、前時代の絵では考えられない。印象派は自然の光を描くというが、実は最初は都市風景を描いたのである。ピサロやモネも都市風景を描き、人物はその風景の一部となっている。主役は美しきパリである。

この場所は数人の画家が描いているが、こんな賑やかなのは1枚もない、この絵はリアルではなく、ルノワールがモデルと空想を使って描いたのだ、時代は普仏戦争に敗北し、ようやく騒乱が終って第三共和制ができたところ、彼が描くのは実はその希望である。

顔のない人々は何者でもない、服もだいたい同じで没個性的である。特徴的な仕草も事件もなく、皆踊っている。しかし絵画的には事件である。つまりルノワールが描くのは皆が平等な共和制のユートピアの姿なのだ。しかし次第に都市はブルジョアの金の世界になり、画家達は失望していく。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。