ベルエポック8-「80日間世界一周」

1873年、ジュール・ベルヌの小説「80日間世界一周」が出版されてブームを起こした。夢物語と思いきや、実際にこれを真似して89年に72日間で世界一周に成功した者が現れている。世界はとてつもなく近くなったことをこの小説は大衆に知らせ、旅行への夢をかきたてた。

71年には、近代ツーリズムの祖であるトーマス・クックが旅行会社を立ち上げ、7日間のエジプトツアーを企画した。スエズ運河の費用返済のための資金が必要だったエジプトは、このツアーを喜び、翌年中東事務所を開設させて便宜を与えた。エジプトの観光ブームはここから始まる。

トーマス・クックが最初にツアーを組んだのは1841年で、45年に鉄道を使ったレスターからリバプールまでのツアーで350人を集めた。その後鉄道の進展と共にイングランドからスコットランドツアーを行い、とりわけ1851年のロンドン万博には15万人以上を旅行させて大成功した。

レジャーというのは貴族のような有閑階級の特権だった。新興ブルジョアは貴族のようになったという証に余暇に旅行を楽しむ。しかし彼らは実業があってその合間に企画にのってツアーを楽しむようになる。さらに20世紀になって労働時間が減ると大衆ツアーが全盛を迎える。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。