第3回十字軍16-獅子心王勝利の油断に死す

ライオンハート大陸に来たる。フィリップ2世もこれを受けて立ったところを見ると多少なりとも自信はあったのだろう。リチャードはここでノルマンディーに中東の先進築造技術を取り入れたガイヤール城を建築してまず防備を固めた。そして戦いに出るとやはり強かった。

フィリップは、同盟諸侯連合をけしかけるが、次々に蹴散らされた。1194年7月3日、ついに両者が対決したフレトヴァルの戦いでは、仏王は金庫や公文書まで捨てて逃げ出すという惨敗を喫した。もはやなすすべもなく、獲得した領土はすべて返還して講和した。

アリエノールにまた平和の時がやってきた。皇帝ハインリヒ6世が崩御し、98年彼女の孫のオットー4世がローマ王となった。孫のアンリもエルサレム王、娘はカスティーリア王妃、トゥールーズ公妃となり、まさに彼女はヨーロッパの母となっていたのである。

しかし幸せなときは続かない。99年反乱の後始末中の息子リチャードが、うかつにも鎧を着けずに視察し、クロスボウで深手を負ったのだ。母は必死で隠棲先の修道院から駆けつけ、何とか息子の死を見届けることができた。ライオンハートの後継は弟ジョンが継ぐことになった。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。