第3回十字軍15-老母の一念獅子心王解放

リチャードの母アリエノールは70歳になっていた。彼女はこのときノルマンディーのルーアンに居て、リチャード幽閉の情報を掴み、皇帝ハインリヒ6世や教皇に、息子の解放を要請していた。しかし実はこの皇帝もリチャードに因縁があり、このときとばかり身代金大枚15万マルクを吹っ掛けた。

ルーアンには仏王フィリップも来て、獅子心王の元婚約者である姉の引き渡しを求めたが、母は息子と交換と追い払った。老王母は英国に戻り、国民に身代金の支払いを求めると共に、皇帝に値下げ交渉を行い、結局10万マルク以下であとは年5千ポンドずつ支払うことで決着した。

1194年2月2日、マイセンでリチャードは解放された。72歳になったアリエノールはやつれていたが、現地まで赴き、自分の胸に自慢の息子を抱擁した。この解放を実現せぬよう尽力していた仏王は、反乱息子ジョンに向かって「気をつけろ、悪魔は解き放たれた」と手紙に書いた。

3月12日、母子は揃ってロンドンに帰国。4月17日、十字軍の英雄を国民は盛大な帰国式典で歓迎した。このイベントで反乱者の気勢はそがれ、皆リチャードのもとに恭順の意を示した。そして5月、大陸に出たリチャードの元に、ジョンが降伏した。母の取りなしで王は弟を許し、仏王に宣戦した。

下はアリエノールのとりなしによるジョンの降伏

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。